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2025.09.17コーディネーター日記(音楽事業部 生演奏課:赤池)

こんにちは。生演奏課の赤池です。
音楽業界に永らく身を置いている私ですが、音楽への価値観を大きく変えたターニングポイントが2つありました。

1つ目は東日本大震災の時です。
想像を絶する災害の中、嘆き悲しむ人々を音楽で癒せたら…と願いましたが、今日食べる物もままならず、安心して寝る場所さえ確保されない状況下では、音楽が何の役にも立たないことを、まざまざと見せつけられました。

東京にいた私たちも、計画停電に合わせた生活スタイルとなり、電力消費する照明を使用して公演やコンサートをするなんてとんでもない。自主的に公演の中止を決めるのが当然と言う風潮に変わりました。こんな時に音楽芸術など不謹慎だ、とさえ言われました。

自分が大切にしてきたものは何だったのか。
音楽とは何なのか。

そんなことを考えながら、空白になったスケジュールに絶望したのを覚えています。

時とともに衣食住の保障がされてきた頃、今までの緊張の糸が切れたように、人々は音楽を欲していきました。
コンサートでボロボロと涙を流す人。『今まで泣けなかったの。ありがとう』の言葉とともに終演後手を握ってくれたお客様。
日常の中では、引き出せない感情を引き出し、癒し、勇気づけてくれるのも、音楽の力でした。

やっぱり音楽ってすごい、と、改めて感動しました。

2つ目のターニングポイントは、記憶に新しいコロナウィルス感染症の大発生時です。
東日本大震災の頃と同様、今度は人々の接触を避ける意味でイベントの中止を余儀なくされました。それぞれが自宅にこもり、音楽は個々に楽しむものに変化していきました。オンライン上で完結するイベントも多く、身近に音楽が楽しめる代わりに、共有する喜びは薄れていきました。
生で演奏することや、空間を共有することは否定されたようで、東日本大震災の頃と同じだ…と、音楽の危うさを痛感しました。

再び人々が集い、音楽を楽しめるようになった今、自分と奏者、更には観客同士も含め、空間を共感することで生まれる感動は確かにあると思っています。
流れる音は一緒でも、誰かと聞く、弾いている人と同じ空間にいて、共に緊張感も感動も共有する。これが更に音楽の力を引き出してくれる事を、隔離生活の先に知りました。

この2つの出来事から、音楽が力を発揮できるのは、人々の安定した生活があってこそだと、改めて感じました。
音楽に心を動かせると言うのは、当たり前では無く、とても幸せな事なのだと思います。

これからも、音楽を楽しめる社会である事を願いつつ、音楽に遣えていきたいと思います。